1. はじめに:NDフィルターとは何?初心者でもわかる基本知識
NDフィルターの役割を簡単に説明
NDフィルターとは、カメラレンズの前に装着し、撮影時に入る光の量を減らすためのアクセサリーです。
「ND」とは「Neutral Density」の略で、光のバランスを変えずに全体の明るさを抑える特性を持っています。そのため、フィルターを使っても色味が大きく変わることなく撮影が可能です。
簡単に言ってしまえば、カメラのサングラスのようなものです。
NDフィルターはどんな時に使うの?
このフィルターが必要になるのは、長時間露光や明るい日中での撮影を行いたい場合です。
例えば、滝や川の水の流れを滑らかに表現したり、動いている雲を幻想的に写したりするときに長秒露光が必要になりますが、そんな時にNDフィルターが役立ちます。また、屋外でのポートレート撮影で背景を美しくぼかす際にも、NDフィルターを使用することで絞りを開けたまま撮影できるため、明るすぎる環境下でも理想的な設定が可能となります。
2. NDフィルターの種類と選び方:どれを使えばいいの?
NDフィルターの「濃度」って何?
NDフィルターには「濃度」と呼ばれる光をどれだけ減らせるかを示す指標があります。
濃度はND2、ND8、ND64、ND1000などの数値で表され、数値が大きいほど減光効果が強くなります。
例えば、ND2は光量を半分に、ND8は1/8に、ND64は1/64に、ND1000は1/1000に抑える効果があります。日中の軽い光量調整にはND8、滝や川の長時間露光にはND8・16がよく使われ、晴れた海の長時間露光ではND1000のような高濃度のフィルターが使用されます。
撮影地の状況や撮影したい表現などにより、必要となる濃度が変わって来ますので、撮影に行く前に下調べをしたり、撮影したい表現などを頭に入れておくと良いでしょう。
固定式と可変式の違いとメリット・デメリット
また、NDフィルターには「固定式」と「可変式」の違いがあります。
固定式NDフィルターは、1つの濃度のみのフィルターです。
そのため、画質が安定しており、プロもよく使用しています。
ただ、違う濃度が必要な場合には複数のフィルターを持ち運ぶ必要があるので、荷物が少し増えますし、光の変化によって付けたり外したりする必要があるため、撮影の手間も増えます。
一方、可変式NDフィルターは、1枚で濃度を調整できる便利なフィルターです。
濃度の変更が頻繁な撮影では非常に使いやすいフィルターですが、特定の角度や高濃度ではムラが出やすいことがあり、画質への影響が固定式に比べて少し大きい点がデメリットです。
ただ、技術の進歩によりムラが出にくい可変式のフィルターも出て来ていますので、チェックしてみて下さい。
また、光が変わりやすい動画撮影の際にも可変式は重宝します。
初心者には、コストパフォーマンスや使いやすさから可変式がオススメですが、画質を優先する場合は固定式を選ぶのがおすすめです。
また、物によっては一年も経たずに劣化が起きてしまい、すぐに買い替えないといけなくなる商品もあるみたいなので、注意が必要です。
用途に合わせて適切なフィルターを選び、撮影を楽しんでください。
3. NDフィルターを使うと何ができる?具体的な効果を知ろう
NDフィルターを使用することで、写真表現の幅を大きく広げることができます。その効果を具体例とともにご紹介します。
「水の流れ」の表現
まずその効果の代表例として「水の流れ」の表現があります。
滝や川を撮影する際、シャッタースピードを遅く設定すると、水の流れが絹のように滑らかに描写されます。川の写真などでよくみた事がある、水の流れが白い線のように綺麗に映し出されるアレです。
また、水面や湖面など波打つものを長時間露光で撮影すると波飛沫のない滑らかな水面として表現することも可能です。
しかし、日中の明るい環境ではシャッタースピードを遅くすると写真が白飛びしてしまいます。これを解決してくれるのがNDフィルターです。そもそもの光量を抑えることで、適切な露出で長時間露光が可能になります。
「動きのある雲を幻想的に写し・人を消す」
「動きのある雲を幻想的に写し・人を消す」という効果もNDフィルターならではです。
長時間露光を活用し、空を流れる雲を写すと長く引き伸ばされた白い線のように描写され、幻想的になったり、街中や観光地などで歩いている人をほとんど見えなくしたりすることができます。
これにより、普段とは違った面白い風景写真を撮影できます。
ポートレート撮影
ポートレート撮影でもNDフィルターは活躍します。
明るい日中に背景を大きくぼかしたい場合、絞り必要がありますが、何もつけずに撮影すると、明るすぎて写真が適正露出になりません。
そんな時にNDフィルターを使えば、明るさを抑えながら背景を美しくぼかすことができます。
NDフィルターを使うことで、より楽しく・クリエイティブな撮影が可能になります。
4. 初心者必見!NDフィルターの使い方ステップガイド
NDフィルターを使うには、正しい取り付け方と適切な設定が重要です。
ここでは、基本的な使い方をステップごとに説明します。
1. NDフィルターの取り付け方と注意点
まず、カメラのレンズ径に合ったNDフィルターを用意します。
カメラのレンズ径は、フィルターの外枠に記載(サイズ例:82mm)されていますので、しっかりとチェックして下さい。
フィルターは、レンズの前面にねじ込むだけで取り付けが完了です。
このとき、フィルターを強く締めすぎないよう注意してください。
取り外す時に、固すぎると取り外せなくなる時があります。
最近では、マグネット式やはめ込み式など色々な取り付け方法のフィルターも増えています。こちらは、脱着がねじ込み式に比べて簡単にできる事が魅力です。自身の撮影スタイルに合わせて検討してみて下さい。
また、フィルター表面に指紋や汚れがつかないよう、装着前にクリーニングを行いましょう。
2. 光量の調整とカメラ設定のポイント
NDフィルターは光量を減らすことで、シャッタースピードを遅く設定したり、絞りを開けたりする余裕を生み出します。
例えば、明るい日中で水流を滑らかに撮影する場合、ISO感度は低め(ISO100など)に設定し、絞り値(F値)は表現に合わせて設定します。シャッタースピードは、表現にもよりますが、1/2〜5秒程度を目安に設定し、この設定で適正露出になるNDフィルターを選択します。
大体の目安として、ND8・ND16・ND64ほどです。
3. NDフィルターを使った撮影手順
- 撮影場所で構図を決め、フィルターを装着せずにカメラの設定を確認します。
構図を決める前にNDフィルターをつけてしまうと、ファインダーや画面が暗くなり、ピンと合わせなどがしづらくなります。 - フィルターを装着し、暗くなったファインダーやライブビューを見ながら露出を調整します。特に長時間露光では三脚を使い、手ブレを防ぎましょう。豆知識として、長時間露光時で三脚を使用する時は、手ぶれ補正機能をOFFにしておきましょう。
- シャッタースピードを調整し、適切な露出で撮影を行います。何度か試し撮りをしながら細かい設定を調整すると、失敗を防げます。
5. NDフィルターを使うときの注意点とトラブル対策
NDフィルターを使うと、表現の幅が広がりますが、注意すべき点やトラブルもいくつかあります。ここでは、よくある問題とその対策をご紹介します。
1. ケラレ(画面の四隅が暗くなる現象)
広角レンズでNDフィルターを使用すると、画面の四隅が暗くなる「ケラレ」という現象が発生することがあります。
これはフィルターの枠が写り込むことが原因です。
対策としては、薄型のフィルターを選ぶか、ズームレンズの場合は少し画角を狭めることで防げます。また、レタッチ時に、トリミングする方法もあります。
重ね付け(NDフィルター+PLフィルターなど)をする際は特に注意が必要です。
2. フィルターの反射による画質の低下
レンズに強い光が入ることで、レンズフレアやゴーストが発生することがあります。
これを防ぐには、マルチコート(反射防止コーティング)が施されたフィルターを選んだり、レンズフードを併用することで、余分な光の侵入を抑えることができます。
3. フィルターの汚れや傷
NDフィルターの表面に、汚れや指紋がつくと画質に影響を与えます。
使用前後に、ブロワーでホコリを落としたり、レンズクリーナーで表面をきれいに拭き取ることを習慣づけましょう。
また、フィルターを使用しないときは専用のケースで保管することで傷を防げます。
4. 暗くなりすぎてピントが合わせにくい
手順の項目でも紹介しましたが、高濃度のNDフィルターを装着すると、ファインダーやライブビューが暗くなり、ピント合わせが難しくなる場合があります。
対策としては、手順でも記載した通り、フィルターを外した状態でピントを合わせた後に装着する方法です。
これらの注意点を意識することで、NDフィルターをより効果的に活用し、トラブルを防ぎながら撮影を楽しむことができます。
6. おすすめのNDフィルター紹介:初心者にピッタリのモデル
NDフィルターを選ぶ際に重要なのは、フィルター自体の品質だけでなく、その他の便利なアイテムも一緒に揃えることで、より快適に撮影を楽しむことができる点です。ここでは、初心者におすすめの「Kenko(ケンコー)」と「NiSi(ニシ)」のNDフィルターに加え、フィルターと一緒に揃えたい便利なアイテムをご紹介します。
1. Kenko(ケンコー)
私も愛用している日本の信頼できるカメラアクセサリーブランドです。
私が使っている「Kenko PRO1D NDフィルター」は初心者にも扱いやすい製品です。
PRO1Dシリーズは、レンズの色合いを変えることなく、自然な撮影が可能で、フィルターをつけたままでもシャープな画質を保ちます。さらに薄型設計なので、先ほどご紹介した広角レンズでもケラレも少なく使いやすいフィルターです。※16mmくらいになると少しケラレが発生します。
また、ND1000のものですと「Kenko NDフィルター PRO-ND1000 82mm」を使用しています。
ND1000程の濃度ににもなると、装着してファインダーを覗いても真っ暗になってしまい、どこを見ているのかわからないほどです。
下記の写真はこのフィルターを使用して撮った写真になります。
真夏の昼間に3分程の長時間露光をして撮影しました。
クリアな写真で、色味も綺麗に出ていて、雲も流れている様が描写されている事がわかります。
2. NiSi(ニシ)
NiSiは、Youtubeでもよく見ますよね。風景写真家や動画撮影者に人気が高いブランドです。
その中でも、私が欲しいと思うものは「NiSi SWIFT FS NDキット」です。
このフィルターの最大の特徴は、「重ね付け」のコンセプトです。
従来のねじ込み式の煩わしさやマグネット式の不安さなどから解放され、簡単に脱着でき、しっかりと重ねられる押し込むタイプの「SWIFT」システムを採用しています。
これにより、SWIFT FS NDは単体での使用だけでなく、他のNiSiフィルターと組み合わせることで、NDの濃度を素早く変更できる柔軟性を持っています。たとえば、明るい日中の風景撮影や、長時間露光を行う際に、光量を細かく調整したい場合でも、複数のフィルターを簡単に重ねて使うことが可能です。
また、「FSND(フルスペクトラムND)」を採用しているため、色被りなど色味の変化がほとんどなく、自然で美しい仕上がりを実現します。
NiSi SWIFT FS NDは、撮影初心者でも簡単に使いこなせるうえに、レベルの高い写真表現をサポートしてくれる便利なアイテムです。撮影の幅を広げたい方に、ぜひおすすめしたいフィルターです。
高品質で長持ちするため、少し高価ではありますが、長期的に使える安心感があります。
3. NDフィルターと一緒に揃えたい便利なアイテム
- フィルターケース
NDフィルターは非常に繊細で、傷がつくと画質に影響を与えることがあります。
そのため、専用のフィルターケースで保管することをおすすめします。これにより、フィルターを保護でき、清潔に保つことができます。
- ブロワー・レンズクリーナー
フィルター表面に埃や指紋、汚れがつくと、写真に影響を与えます。フィルターを装着した後は、ブロワーやレンズクリーナーを使って定期的に掃除することが大切です。マイクロファイバークロスやレンズペンは、簡単に汚れを取り除けて便利です。
- レンズフード
レンズフードは、フィルターを使う際にも役立つアイテムです。フードは光の反射を防ぐだけでなく、フィルターを傷から守る役割も果たします。また、逆光時のフレアやゴーストを防止するためにも有効です。
これらの便利なアイテムを揃えることで、NDフィルターの効果を最大限に活かし、快適に撮影を楽しむことができます。
まとめ:NDフィルターで写真の可能性を広げよう!
NDフィルターは、光量を調整することで様々な表現を加えることができる魅力的なツールです。特に、動きのある被写体や美しい風景を撮影したいとき、NDフィルターを使うことで、シャッタースピードを自分の思う通りに設定でき、幻想的な写真を撮影することが可能になります。
NDフィルターを購入したら、まずは「長時間露光」を試してみることをおすすめします。滝や川、湖、海などの風景を撮影し、長時間露光で水の流れを繊細に表現してみると、その魅力に惹き込まれるでしょう。
また、長時間露光で街並みから人を消したり、逆光でNDフィルターを使うことで、空の明るさと地面の暗さをバランスよく調整でき、より印象的な写真が撮れます。
NDフィルターを使うことで、自身で撮る写真の可能性が広がり、より一層写真の魅力に引き込まれること間違いなしです。
是非、ご自身に合ったNDフィルターを探してみて下さい。
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